写真を長くやっていると、撮る前にイメージが脳内に浮かんでしまう。 対象を前にしたとき、どう撮りたいかが先行し、自分の「手垢」がついた写真になりやすい。その手垢が、時に被写体に対して支配的になるのではないかと思った。
脳内の写真を現実に再現することは、目の前のありのままを撮ることなのだろうか。
10年以上前に撮った写真を見返してみた。 そこには、その時交わされた会話や音、空気感のような「写真に写らないもの」が宿っていた。 以前、ある人は「あなたの写真を大切に」と言い、またある人は「撮影中に気配を消せる」と言った。その言葉たちが、頭の片隅から、大切なことを思い出させてくれた。 写真の中の子供たちは素直で、また彼らに会ってみたいと思った。
この日、息子は妻に髪を切ってもらっていた。
顔も写っていないこの写真を見て、10年後の私は、今日交わした会話を思い出すだろうか。
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